今回は鎌倉時代「尼将軍(あましょうぐん)」として武士たちから恐れられた北条政子を取り上げます。
え?女なのにスキンヘッドなの?
出家したからね。笑
北条政子は驚くほどリーダーシップのあるたくましい女性だったんだ。
北条政子と言えば源頼朝(みなもとのよりとも)の妻としても有名。
今回は武士の社会でたくましく生き抜いた男顔負けの女性、北条政子から学べる処世術を紹介していきます。
目次
北条政子のプロフィール

名前:北条政子
生年月日: 1157年
生まれ: 伊豆(いず・今の静岡県伊豆)
仕事:御台所(みだいどころ・将軍の妻)
北条政子は豪族の娘
本日の「#平清盛」#銀河盛 第34回「白河院の伝言」
— 歴人マガジン (@rekijin) April 6, 2017
病に倒れた清盛の夢の中に登場する白河院と舞子。清盛に対し白河院が語りだしたこととは…?そして、満を持して北条政子(杏)が登場です! pic.twitter.com/JSyFE4xIBH
北条政子は、伊豆(いず・今の静岡県)を納める豪族、北条家の娘として生まれました。
政子の父親は地方官僚のような仕事をして、朝廷から支持された仕事をしながら今の静岡県一帯を納めていました。
北条政子は比較的裕福な家庭で育ったお嬢様でした。
女の子なのにもかかわらず、男のような恰好をし、男勝りで野生児のような活発な幼少期だったといわれています。
禁断の恋に落ちる

北条政子の父親は、当時源平の戦いに敗れた源氏の息子ということで伊豆に幽閉された源頼朝を監視する仕事をしていました。
そんな父親が不在の時に、政子は源頼朝と出会い運命的な恋をします。
当時は犯罪者の息子として扱われていた頼朝との恋愛は、当然のように親の反対にあいます。
しかし、政子は一度決めたらぜったいに譲らない頑固な性格だったこともあり、周囲の反対を押し切ってでも頼朝と結婚することに決めるんです。
えー!そんな昔から親の反対を押し切って結婚する女性がいたなんてなんか好きだなこの人。
武士のリーダーの妻となる

北条政子の夫である源頼朝は朝廷・平家から権力を奪い取り、それまでいいように使われていた武士たちの地位を上げるために戦いました。
頼朝は各地の武士たちから支持を得て、日本で最初の幕府、鎌倉幕府を築いたカリスマ的な存在となります。
そんな頼朝をとなりで支えながらも、政子も妻として鎌倉幕府を守り抜いたカリスマ女性リーダーとして歴史に名を残しています。
夫の死後たくましく武士をまとめる

夫の源頼朝の亡き後、頼朝に代わり、気性が荒くプライドの高い関東の武士たちを束ねて 鎌倉幕府の権威を保ちつづけることに成功しました。
ある日朝廷が、政子含む北条家の権力に目をつけ、喧嘩を売ってきたことで始まった 「承久の乱」。
この戦いで 政子は北条家を守るために朝廷と戦うことを決心します。

ちなみに朝廷に対して弓を引くなんてことは後にも先にもこの戦いしかありません。
武士たちは「朝廷に刃向うなんて怖い!無理!どうしよう…朝廷側につこうかな…」とおびえて悩んでいました。
政子はそんな危機を乗り越えるべく、武士たちを集めて熱い演説をし、武士たちを鼓舞したと言われています。
みなさん,心を一つにして聞いてください.
これは私の最後の言葉です.
頼朝様が武士の政権を創ってから後,あなた方の官位は上がり収入もずいぶん増えました.
平家に仕えていた時には裸足で京まで行っていたあなたたちでしたが,京都へ行って無理に働かされることもなく,幸福な生活をおくれるようになりました.それもこれもすべては頼朝様のお陰です.
そしてその恩は山よりも高く海よりも深いのです.
しかし今その恩を忘れ天皇や上皇をだまして、私たちを滅ぼそうとしている者たちがあらわれました。
名を惜しむものは藤原秀康・三浦胤義らを討ち取り、三代の将軍の恩に報いて欲しい
もしこの中に朝廷側につこうと言う者がいるのなら,まずこの私を殺し,鎌倉中を焼きつくしてから京都へ行きなさい
北条政子
政子によって熱い気持ちを取り戻した武士たちは、鎌倉で朝廷を迎え入れるだけだった受け身の計画を変更し、 一気に京都まで攻め入り勝利することができました。
北条政子から学ぶ処世術
政子の演説はどうして武士たちの心に刺さったんでしょうか?
たった一人の女性の演説がどうして気難しいツワモノたちを突き動かし、「ご法度」とされる朝廷に向かい矢を放つような危険な戦に駆り立てたのでしょうか?
そこには北条政子の巧みな演説テクニックがあったからだといわれています。
総論賛成でみんなの心をつかむ

北条政子の前には何百もの所属の異なる関東武士たちが集まりました。
それぞれ守る土地も、立場も異なる気難しい人たちです。
そんな人たちを一つに束ねるには、まず、誰もがYESとうなずく総論賛成を得ることが大切です。
頼朝様が武士の政権を創ってから後,あなた方の官位は上がり収入もずいぶん増えました.
関東武士たちにとっての「総論賛成」は、今は亡きリーダー源頼朝の存在でした。
それぞれがいがみ合っていても、みな源頼朝のことを慕い、尊敬し、彼のためならなんでもやろうという情熱がありました。
北条政子は源頼朝の妻として、それが手に取るようにわかっていたため、この場で彼の名前をだしあえて彼のことを引き合いに出したのです。
共通の傷に触れて皆の心をつかむ

総論賛成で皆の心をつかんだ後は、目の前の意見の異なる人たちをひとつにまとめることが大切です。
そんな時有効なのが、「共通の傷」に触れること。
マーティン・ルーサー・キングJr.の有名なスピーチ”I have a Dream”でも同じ手法が使われていますね。
黒人たちが受けた様々な差別のこと。苦しかった毎日のこと。殺された仲間たちのこと。
共通の傷を負った人たちは、その傷を負った者にしかわからない痛みを知っています。
そしてその痛みを知っている人たちは互いの痛みが痛いほどわかるので、自然と仲間意識が芽生えるのです。
北条政子はそれをわかっていたからこそ、あえて自分たちが過去どんなつらい目にあっていたかを一度思い出させるために言及しました。
平家に仕えていた時には裸足で京まで行っていたあなたたちでした。
これまで平家に虐げられてきた自分たちのつらい過去を振り返り、みんなを一つにまとめ上げることができたんです。
課題をすり替えて皆の心をつかむ

皆を一致団結できたとしても、次にどういう行動を起こすかは、それぞれの意思で決まります。
皆の関心があること=それはいつの時代も自分自身のことです。
そのため選挙演説や街頭の広告には、いかに街をゆく無関心な人たちに対して「自分ごと化」させるかという点が重要になってきます。
天皇や上皇をだまして、私たちを滅ぼそうとしている者たちがあらわれました。
北条政子は朝廷から目を付けられている北条家の危機を「鎌倉幕府そのものの危機」という一大事に巧みにすりかえて、武士たちの心に訴えました。
目的を与えることで皆の心をつかむ

どんな演説にも必ず目的があります。
選挙で自分に一票投じてもらいたいのか、商品を買ってもらいたいのか、SNSでいいね!をしてもらいたいのか。
だからこそ、聞き入る皆に「どうしてほしいのか」をハッキリと伝えること で目的は達成され、聞いているほうも気持ちよくその行動ができるんです。
単純なことですがこれってとても大切なことなんです。
普段のビジネスメールでもきちんと相手に目的を与えてあげて、「次に起こしてほしい行動」を示してあげられる人日々の仕事もスムーズにこなしています。
名を惜しむものは藤原秀康・三浦胤義らを討ち取り、三代の将軍の恩に報いて欲しい 。
北条政子の目的は関東の武士たちを朝廷と戦わせること。
だからこそ明確に「こうしてほしい」と伝えていますね。
覚悟を見せて皆の心をつかむ

人の心に訴える演説をする人は必ず自信に満ち溢れていますね。
それは目の前の人たちの心をつかんで、行動してもらうために、自らが矢面に立ち声を張り上げるという覚悟をしているからです。
その覚悟を感じて、利き手も「あ、この人本気だな」「どうやら口だけじゃないな」と心を動かされるんです。
演説で大切なのは、自信をもって相手に訴えること、そしてその演説の言葉に責任をもつこと、自分の覚悟を相手に伝えることです。
もしこの中に朝廷側につこうと言う者がいるのなら,まずこの私を殺し,鎌倉中を焼きつくしてから京都へ行きなさい
朝廷側につくならまず私を殺してからいけと。
血の気が荒く上に深い武士たちは、これくらい極端な言葉をつかわないと女性に耳を傾けないとわかっていたんでしょう。
この北条政子の覚悟で武士たちは一気に心をつかまれてしまいました。
過去の大河ドラマで北条政子を知ろう

1979年に放送されたNHK大河ドラマ「草燃える」は、源家を支えた北条政子の生涯を中心に描かれています。最終回の演説のシーンは…涙なしでは見られません。。
「草燃える」は総集編は動画配信サービス「NHKオンデマンド」と「U-NEXT」で配信されています。
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アニメで北条政子を知ろう

日本史に登場する偉人たちが、みーんなネコだったら…?というユニークな切り口で1話10分程度の短いストーリーで偉人の個性と、歴史的背景にスポットを当てて紹介していく「ねこねこ日本史」シリーズ。
お子さんからお年寄りまで誰にでもわかりやすく、気軽に学べるため最近ではNHKでもOAされています。
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プロフィール

asuka(30代)
twitter : asuka@麒麟を待つおんな
超ライトな歴史好き(歴史勉強中)
歴史は大人になってからの方が面白いと気付いた元日本史アレルギーのアラサーOL